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【カンボジア金融】銀行の法定準備率とは?預金の8~12.5%を中銀に

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銀行に預けたお金は、その全額が銀行の金庫に保管されているわけではありません。銀行は預金を企業や個人への融資などに活用する一方、一定額を中央銀行に準備金として保有することが義務付けられています。カンボジアでは、この仕組みを「法定準備率(Statutory Reserve Requirement=SRR)」と呼び、金融システムの安定や信用供給の調整に重要な役割を果たしています。

■ 法定準備率(SRR)とは

法定準備率とは、銀行や預金を受け入れる金融機関が、預金や一定の負債のうち一定割合を準備金としてカンボジア国立銀行(NBC)に保有する制度です。

NBCによると、現在の準備率はカンボジア・リエル建てが8%、米ドルなどの外貨建てが12.5%となっています。つまり、単純化すると、対象となる預金などが100ドルあれば、そのうち12.50ドル相当を準備金として維持する仕組みです。残りの部分は、融資など銀行の通常の業務に活用できます。

ただし、これは「預金の12.5%を銀行が現金として金庫に保管する」という意味ではありません。銀行はNBCに対して必要な準備金を維持し、日々の預金残高などを基準に必要額を管理します。2024年のNBC規則でも、準備率は一定期間の平均残高などに基づいて管理される仕組みが定められています。

■ なぜ銀行にSRRが必要なのか

SRRには大きく2つの役割があります。

1つ目は、銀行の流動性を確保することです。銀行が預金をすべて融資に回してしまえば、多くの預金者が同時に資金を引き出そうとした場合に対応できなくなる可能性があります。一定の準備金を確保させることで、銀行システムの流動性を支える役割があります。

2つ目は、金融政策の手段として信用供給を調整することです。NBC自身も、準備率を「信用の伸びる速度をコントロールするための金融政策手段」と位置付けています。準備率を引き上げれば銀行が融資などに回せる資金は相対的に減り、反対に引き下げれば金融システムに流動性を供給する効果が期待できます。

■ カンボジアではなぜ外貨の比率が高いのか

カンボジアのSRRを理解するうえで重要なのが、リエルと外貨で準備率が異なることです。

現在、リエルは8%なのに対し、外貨は12.5%となっています。カンボジアでは米ドルが広く利用される「高度にドル化された経済」であるため、NBCはリエルだけを対象とした金融政策を行うことが難しいという特徴があります。NBC自身も、経済の高度なドル化が金融政策の有効性を制約していると説明しています。

このため、外貨預金についても一定の準備金を確保させることは、銀行システム全体の流動性や安定性を維持するうえで重要になります。

■ SRRは預金者のお金を守る「保険」ではない

ここは非常に重要なポイントです。

法定準備率は、預金保険制度とは別の仕組みです。SRRが12.5%だからといって、「銀行が破綻しても預金の12.5%が自動的に返ってくる」という意味ではありません。

SRRはあくまで銀行が中央銀行に一定の準備金を維持するための制度であり、銀行の経営破綻時に預金者へ一定額を補償する制度とは役割が異なります。

また、銀行の安全性を判断する場合も、SRRだけを見ることはできません。自己資本比率、不良債権、流動性、収益性、資産内容など、複数の指標を確認する必要があります。

■ 過去には金融緩和のためSRRを引き下げ

カンボジアではSRRが金融政策の手段として実際に変更されてきました。

2020年には、新型コロナウイルスの影響を受けた経済や金融システムを支えるため、リエル・外貨ともに準備率を7%とする措置が導入されました。その後、制度が変更され、外貨については2024年から12.5%へ戻す方向が示されました。

NBCの年次報告書によると、2024年末時点ではリエルの準備率は7%、外貨は12.5%で、準備金はリエル約1.7兆リエル、米ドル約40億ドルに達していました。同報告書では、準備率の変更によって銀行システムへ約13億ドルの流動性が供給されたことも説明されています。

その後、NBCは2026年1月にも最低準備要件に関する新たなプラカス(省令)を発行しており、現在の制度ではリエル8%、外貨12.5%となっています。

■ 日本人がカンボジアの銀行を利用する場合のポイント

SRRを知っておくと、カンボジアの銀行に預金したお金がどのように金融システムの中で扱われているのかが分かりやすくなります。

例えば、米ドルで預金した場合、そのすべてが銀行の融資に使われるわけではなく、現在の制度では対象となる預金などの12.5%が準備要件の対象となります。一方、残りの資金についても、銀行は流動性規制や自己資本規制など、その他の金融規制を守りながら運用する必要があります。

近年、カンボジアでは銀行の営業免許取り消しや金融機関に対する監督強化も相次いでいます。そのため、銀行を選ぶ際には預金金利だけでなく、銀行の規模、財務健全性、NBCによる監督状況、流動性などを総合的に確認することが重要です。

SRRは「預金の一部を中央銀行に確保させることで、銀行が過度に資金を運用することを防ぎ、金融システムの安定性を支える仕組み」と考えると分かりやすいでしょう。銀行に預けたお金がどのように動いているのかを理解するうえで、SRRはカンボジアの金融制度を知る重要なポイントの一つです。

それではまた!!

※本記事は海外報道およびカンボジア国立銀行(NBC)の公開資料を参考に内容を整理し、独自に再構成しています。
参考記事:Khmer Times「What really happens to our money in a bank?」

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