カンボジア政府は、アセアン地域内においてカンボジアの投資拠点化を目指し、全国的なインフラと物流システムの近代化とアップグレードを目的とした「包括的複合輸送マスタープラン(CIT-MP)」を立ち上げたのは記憶に新しいと思います。
この取り組みがカンボジア経済にとってどのような影響をもたらすかについての考察がクメールタイムズに掲載されていましたので、ポイントを絞ってまとめていきたいと思います。
今後のカンボジア経済を語る上でとても大切な計画なので、ぜひ時間がある方は原文も読んでみてください。
CIT-MPの概要
- 名称: カンボジア輸送・物流システムに関する包括的マスタープラン2023-2033
- 期間: 2023年から2033年
- 総投資額: 366億8,000万ドル
- 年間投資額: 39億8,500万ドル(2023年から2027年の短中期段階)
- 優先プロジェクト数: 174件
- 道路開発プロジェクト: 94件
- 河川水路プロジェクト: 23件
- 海上輸送プロジェクト: 20件
- 航空輸送プロジェクト: 10件
- 主要物流開発プロジェクト: 15件
主なプロジェクト
- 新しい高速道路:
- プノンペンからケップ
- プノンペンからストゥントレン
- ラタナキリからココン
- 鉄道計画:
- 2030年までにプノンペンからプレイベン、スバイリエン経由でベトナムへ
- 2050年までにベトナム、ラオス、タイへ接続する鉄道3つ
- フナン・テチョ運河(FTC)プロジェクト:
- 総投資額: 17億ドル
- 着工予定: 2024年8月
- 全長180キロメートル
- プレック・タケオからケップ州まで
CIP-MPの目標
- 物流コストの削減
- あらゆる輸送手段を相互接続
- 地域の物流センターと結び付け
- 貿易業者や旅行者の物流コストを削減
- 製造業の貿易の容易さを高める
投資の重要性と影響
- 評論家の意見:
- CIP-MPはカンボジアの経済と国民の健全性に長期的な利益をもたらす。
- 世界中の大規模インフラ投資家にとってユニークな機会を提供。
- 具体的な期待:
- 製造業の競争力向上
- 外国直接投資(FDI)の増加
- 雇用創出と経済成長
資金調達方法
- 国家予算
- 公共投資プロジェクトへの外国からの財政支援
- 官民パートナーシップ(PPP)
主要投資国と地政学的考慮
課題とリスク
- 中国経済の後退:
- 成長鈍化のリスク
- 海外のインフラ開発への資本流入の減少
- 世界的な経済不安定:
政府の決意と将来展望
- 首相の声明:
- FTCプロジェクトを合弁事業とする発表
- 建設・運営・譲渡(BOT)契約によるプロジェクト管理
- 物流アクセスの向上:
- 全国的な包括性を重視
- 観光客向けの歴史的場所へのアクセス改善
- スキル開発の継続:
- 中~高スキルの製造業務の誘致
- 労働者の収入増加の機会拡大
今後の課題についてフォーカスすると、中国に頼りすぎるインフラ開発には注意が必要で、過度の依存は、特に米国やEUとの伝統的な貿易関係から遠ざかることにつながる可能性があるとされています。
そのことからも、貿易と投資のパートナーシップを多様化することは、特定の国への依存を減らすことでカンボジアに利益をもたらすとされています。
また、カンボジアはASEAN諸国や中国との貿易では貿易赤字となっているが、米国やEUなどの西側市場との取引では貿易黒字となっていて、この貿易黒字は経済にとって大きな利益であり、貿易の観点からカンボジアは中国と米国とバランスを取り、両国の輸出市場から孤立しないようにする必要がある指摘されています。
現時点では物流コストが高いカンボジアですが、インフラが整備されていくにつれて物流コストが低くなり、さらに、人材と技能開発に力を入れていけばカンボジア経済はさらなる成長を遂げると思います。
先ずはこの先5年間で急激に変化していくと思うので、今後のカンボジア生活が楽しみです!!
それではまた!!