2025年4月9日から発効した米国の関税引き上げによる影響が、早速カンボジアで現れてきました。
クメールタイムズで今後の産業政策と貿易戦略について詳しく書かれた記事があがっていたので、簡単にまとめていきます。
■ 米国の関税引き上げとカンボジアへの影響
- 米国がカンボジア製品に課す関税を最大49%に引き上げたことで、経済への打撃が深刻に。
- 主な影響を受けている産業:衣料品、旅行用品、履物
- 米国向け輸出工場121社のうち34社が閉鎖を検討
- 製造業者125社のうち81社が他国への移転を計画中
- これにより、第1四半期を除いた経済損失は約14.75億ドルと推定され、GDP成長率も6%から0.3%に低下する可能性。
■ 政府の対応と主張
- 商務省のペン・ソビチート国務長官による主張:
- 米国の関税引き上げは不当で、カンボジア製品への課税率「97%」という主張は根拠なし。
- 実際の平均関税は29.4%程度。
- カンボジアはWTO加盟国として、二国間および多国間の枠組みで抗議・調整を進めている。
■ 関税の波及効果
- 工場労働者の賃金圧迫 → 消費の減少 → 乗数効果は0.9倍
- 外国直接投資(FDI)の停滞:不確実性から2026年以降に延期されるプロジェクトも多数
- ベトナム経由の輸出(例:カシューナッツ)も影響。ベトナムも46%の関税に直面
■ 政策提案と必要な対策
- 短期対策:
- 工場操業支援のため、給与税・最低税などの税負担軽減
- 現金注入やエネルギー補助金の提供
- 中期戦略:
- 太陽光発電導入の促進 → グリーンエネルギー重視のバイヤー(例:ナイキ等)を誘致
- 輸出市場の多角化(日本、中国、韓国など)
- 長期的取り組み:
- インフラ・物流改革(港湾通関の効率化)
- ガバナンス・法制度改革による投資環境整備
- 技能開発・デジタルインフラへの投資
■ 地政学的な背景と貿易戦略
- 中国からカンボジアに移転していた工場も、再びインド、インドネシア、エジプトなどへ移動中。
- 多くの衣料工場が中国資本で、利益重視でより低関税の国へ移る傾向。
- カンボジアは、以下を通じて貿易機会を拡大中:
- RCEP(地域的な包括的経済連携)
- カンボジア・韓国FTA
- EUなどとの貿易協議
■ 専門家の見解(経済学者 ダリン・ドゥク氏)
- カンボジアは今後も「開かれた、予測可能な投資環境」の維持に注力すべき。
- 若く安価な労働力、有利な地理、ビジネス環境の改善努力が引き続き投資先としての魅力を保っている。
- 電子機器・農産物加工・サービス業などの産業多様化がカギ。
カンボジアの輸出は米国にかなり依存している状態(総輸出の約38%)でしたので、今回のトランプ関税ショックは少なからずカンボジア経済に影響を及ぼしています。
また、間接的にベトナムへの輸出も減ることになる可能性がありますので、今後のカンボジア貿易の情報にはかなりアンテナを張っていこうと思います。
今後は産業の多様化が今まで以上にキーワードになってきそうです。
それではまた!!
参考記事:https://www.khmertimeskh.com/501667007/cambodia-mulls-economic-measures-to-protect-key-sectors/